■マコの傷跡■

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chapter 34



~ chapter 34 “失業” ~ 


社内で1度倒れているのにその後も私は病院に行かなかった。
そのまま時々襲われる過呼吸にも慣れてきて、対応出来るようになってきた。
くる、と思う瞬間もわかる。
くる、と思ったら今まで考えていた事を1回頭の中から全部消して
出来る限り落ち着いて、大きくゆっくり深呼吸をする。
大丈夫、そうすればいつもおさまるから。
“大丈夫、大丈夫、ゆっくり、ゆっくり・・・。”

会社に通うのが苦痛なのは変わらないどころか、ますます強まった。
有給はあっという間に使い果たし、欠勤が多い私の収入は今までのおよそ半分にまで落ちた。
そのうち料金未払いで電話が止まり、当時は携帯を持ってなかったから
完全に外からの連絡は取れなくなった。

そんな私を心配して男友達の1人がよく会いに来た。
来ると必ず「何か食べたのか」と聞き、食べてないと少しでも何か食べろと
食べ物を買ってきてくれたり、私を食べに連れ出した。

「会社、辞めちゃえば?無理して行ってもしょうがないじゃん。」
辞めるのは負けだと思っていた。逃げるように辞めて行くのは嫌だと思っていた。
“どうして私が辞めなければいけないの。そんなの悔しい、絶対嫌だ!”
彼の言葉にはいつもこう答えた。
「でも、生活出来なくなるし・・・。」

彼は会う度に私に会社を辞めるように勧めた。
「俺と一緒に暮らせば?そしたら真琴、金要らないじゃん。」
そういう訳にいかないだろう・・・とは思ったけれど、もう限界だった。
必死で意地を張って会社にしがみ付いていても、ちっとも通えていなかった。
会社からもすでに「このままでは辞めてもらう事になる」と言われていた。

“結局、私は根性なしなんだ”自分がますます嫌いになった。
もう、どうでもいいや・・・。どう思われても、どうなってもいい。
意地を張るのは疲れた・・・。

そうして私のアパートに彼が住み始め、私は24歳の時に会社を辞めた。
後の事なんて何も考えていなかった。




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